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障害年金の申請方法  精神疾患の診断書をもらう際の注意点

はじめに

障害年金を申請する際、診断書は最も重要な書類の一つです。特に精神疾患(うつ病、統合失調症、発達障害など)の場合、本人の外見から障害の程度が分かりにくく、診断書の内容が受給の可否を左右することが非常に多くなります。
しかし、診断書を書いてもらう際に「どのように医師に伝えればよいのか」、「何を意識して伝えるべきか」、「診断書をもらう際に注意することはあるのか」、といった疑問を持つ方は少なくありません。
このコラムでは、精神疾患における障害年金の診断書を適切に取得するために、事前に知っておきたい注意点や、主治医との向き合い方、手続きのポイントについて、わかりやすく解説します。

診断書が重要な理由

障害年金の審査において、診断書は“核心的な証拠資料”です。身体障害であれば、レントゲンやCT、血液検査といった客観的なデータが存在しますが、精神障害においては、そうした数値的な証明が困難です。そのため、医師による観察や患者からのヒアリングに基づいた診断書の記述が、障害の程度を示す決定的な材料となります。
診断書には、以下のような情報が記載されます:
・主たる診断名とその分類(ICD-10コードに準拠)
・初診日(障害認定日に関連)
・発病の経緯と治療歴
・現在の症状とその推移
・日常生活能力の程度や支援の要否
・就労や対人関係、生活への具体的な影響
この診断書によって、障害年金の受給が認められるか、認められるとして何級に該当するのかが決定されるため、決して形式的な書類ではなく、非常に重要な役割を担っています。

診断書を依頼する際の準備

① 診断書の様式を事前に確認する

障害年金には、「精神の障害用診断書」という専用の様式があり、日本年金機構が定めたフォーマットを使用する必要があります。医師が障害年金に詳しくない場合、一般的な診断書や自由記載の書類を交付されるケースもあるため、こちらから様式を用意し、依頼時に渡すほうがより安心です。

② 主治医との信頼関係と情報共有

精神科では診察時間が限られており、患者の日常生活の細かな様子までは把握できないことが少なくありません。そのため、診断書作成の際は、自分の状態をわかりやすく伝える努力が必要です。ポイントは、「できること」ではなく、「できないこと」、「困っていること」に焦点を当てて具体的に話すことです。
例:
・「朝起きても布団から出られず、洗顔や歯磨きができない日が多い」
・「他人の視線が怖く、近所のコンビニに行くこともできない」
・「家族がいなければ通院もできず、薬の管理も任せている」
こうした生活の困難さがしっかりと診断書に反映されることで、審査側に現実的なイメージが伝わります。

③ 病歴・就労状況等申立書と整合性をとる

障害年金の申請では、診断書と併せて「病歴・就労状況等申立書」という書類も提出します。こちらには、本人が記入する形で、これまでの病歴や就労の状況、日常生活の困難などを記述します。この書類の内容と診断書の記述に矛盾があると、審査で不利になる可能性があります。
たとえば、申立書には「毎日、身支度もできず布団の中で過ごしている」と記載しているにも関わらず、診断書には「家事全般を一人で行える」となっている場合、整合性がとれていないと判断されてしまいます。診断書を依頼する前に、自分が申立書に何を書いたかを主治医に共有しておくと安心です。

診断書作成時の注意点

① 診断名が明確に書かれているか

診断名が「抑うつ状態」や「情緒不安定」といったあいまいな記載ではなく、正式な分類(うつ病性障害・F32、統合失調症・F20など)として明記されていることが必要です。診断名の記載が適切でないと、審査の段階で信頼性に疑問を持たれる可能性があります。

② 障害の程度が具体的かつ現実的であるか

「外出が困難」、「社会生活に著しい制限あり」といった曖昧な表現ではなく、「一人で買い物に行けない」、「外出には常に家族の付き添いが必要」、「対人恐怖で人との会話ができない」といった、実態に即した具体的な記載があることが大切です。
また、診断書には「日常生活能力の程度」という評価項目があり、「適切な食事ができるか」、「身辺の安全保持ができるか」、「他人との意思疎通が可能か」、といった項目に点数がつけられます。この点数によって等級が左右されるため、現実と乖離しない評価をしてもらえるよう、実情を丁寧に伝えておく必要があります。

③ 初診日の証明ができているか

障害年金の審査において、「初診日」は非常に大きな意味を持ちます。初診日が国民年金の期間中か厚生年金の期間中かによって、年金の種類が異なります。また、初診日から1年6か月後が「障害認定日」となるため、請求のタイミングにも関係します。
初診日の証明が困難な場合には、受診状況等証明書を別途取得する必要があります。特に、初診が10年以上前であるような場合は、カルテが残っていないことも多いため、早めの対応が4.重要です。

診断書を依頼する際の実務的ポイント

① 診断書の作成には時間がかかる

精神科の診断書は、患者の病状や生活状況に関する詳細な記載が求められるため、作成に時間がかかる傾向があります。依頼してから完成まで2~4週間程度かかることも珍しくありません。申請期限を意識して、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。

② 診断書の作成には費用がかかる

診断書の作成費用は医療機関によって異なりますが、5,000円から高いところでは15,000円程度かかる場合もあります。医療費としての扱いになるかどうかや、支払い方法などについても事前に確認しておくと安心です。

③ 記載内容に誤りがないか確認する

診断書は、基本的に一度提出すると訂正や再提出ができません。そのため、医師から受け取った診断書はすぐに封をせず、中身を確認させてもらいましょう。すでに封緘されている場合は、開封して、必ず中身を確認してください。診断書は、封緘されていなくても、障害年金の申請にあたっては、問題ありません。特に、初診日や日常生活能力の評価項目、診断名などに誤りがないか慎重にチェックしてください。

まとめ

精神疾患の診断書は、障害年金の申請において最も重要な書類のひとつです。内容が曖昧だったり、実態と乖離していたりすると、正当な理由があっても年金の受給が認められないことがあります。
診断書の作成にあたっては、主治医に対して自分の病状や生活の困難さを具体的に伝える努力が必要です。診断書の様式や病歴申立書との整合性にも注意し、可能であれば専門家である社会保険労務士に相談することで、より確実な申請が可能になります。
一人で悩まず、必要な支援を受けながら進めていくことが、受給への第一歩です。

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